反抗期に片足突っ込んでるブラッドリーと学習しないマーヴェリックの話(過去捏造)
ルスマヴェ未満
「マーヴ、半年前はどこにいたの?」
買ったばかりのソフトクリームに口をつける前に、ベンチに座ったブラッドリーはマーヴェリックを見上げて、あどけない顔つきでそう尋ねた。
不意をつかれた質問にマーヴェリックは何度か瞬きをし、胸ポケットから取り出したサングラスをかけながらブラッドリーの横に座る。それから、どの言葉を選べばこの11歳の子供にうまく伝えられるのか考えた。視線の先では美しい西海岸のビーチにオレンジ色の夕陽が傾きつつあった。
「――ヨーロッパの方に」
「知ってる。ボスニアだって」
迷った挙句の言葉はすぐにブラッドリーに遮られた。驚いたマーヴェリックが横に座るブラッドリーを見下ろすと、彼は不満げな顔でソフトクリームを嘗めていたので、この答えは彼の望むものではなかったらしい。
かといってこれ以上細かな地名を挙げたところでブラッドリーには伝わらないだろうし、一応終わったものとはいえ軍事作戦は機密とされるもので、子供に対して大っぴらに喋るものでもない。
「あー…………」
「マーヴは夜眠れないことはある?」
答えに窮して押し黙ったマーヴェリックに対して、ブラッドリーはまたほかの問いを投げかけた。
「ん、ああ……そりゃたまには。どうした、寝られないのか?」
これ幸いと新しい質問に答えて、心配するように腕をまわしてブラッドリーの肩を軽く叩く。彼はマーヴェリックの顔を一度見上げてから、またソフトクリームを嘗めるために前を向いて話をつづけた。
「たまにね。半年くらい前、のどが渇いて夜中に目が覚めた」
「…………」
「キッチンに降りて行ったら母さんが起きてて、誰かと電話で話してたんだと思う。友達だとしか教えてくれなかったけど。俺がいるのに気づいたら母さん、笑って早く寝なさいっていった——聞いてる? マーヴ」
「ああ、……聞いているよ」